建具、それは一番身近な職人技

祖父母の家には昔から立派な欄間がありました。彫刻が施され、大人になった今見てみると家の一部というよりは、芸術品もしくは工芸品のように見えます。

以前改装して住んでいた築40年のマンションにも和室があり、細かな細工が施された引き戸が建具として活躍していました。特に木枠にはめられたすりガラスはレトロな風合いでお気に入りでした。

幼い頃から慣れ親しんできた建具ですが、最近のマンションではめっきりみません。木目調のシートがはられた無機質な引き戸。空間を仕切る手段は壁やコンクリート。画一的な部屋を量産することでコストを下げる現代の建築手法には、日本の伝統的な建具はあわなかったのでしょう。

ここにいたのか建具達よ!

こうして目にする機会がめっきり減った建具ですが。以前葉山を訪れた時に建具パラダイスがあったのを思い出し、忘れないうちに記録に残しておこうと思います。古民家の解体で出た廃材を引き取り、セレクトして販売しているお店です。

桜花園 -okaen- @葉山

・HP:http://okaen.life.coocan.jp/
・営業時間:10時〜日没頃(2019年2月HP情報)
・定休日:月曜日
古民家から出た、大小様々な建具や廃材をセレクトして販売しています。職人の手仕事で作られた美しい建具やどっしりした一枚板など希少な品揃えです。

店内には所狭しと、欄間や引き戸が敷き詰められ、レコードショップの建具版のような様相でした。いずれも今の住宅ではなかなか見ない細工が細かなものばかり。こういった店が増えれば、職人の手仕事が次の世代に受け継がれ、ものを長く大切に使う文化の継承にもつながるのではないでしょうか。

葉山の自然の中に建具パラダイスはあります
ただならぬ雰囲気を放つ建具パラダイス
店内は大小様々な建具で溢れています
レコードショップのよう。1つ1に個性があり、再び日の目を見る時を静かに待っています
大型の欄間や柱などもあります

資源としての建具という考え方

今後空き家問題は更に顕在化し、放置される住宅や取り壊される軒数が増えることが予測されます。例えば、こういった建具が資源として注目を集めれば、自然と市場に出回る物量も増えるのではないでしょうか。

資源として注目されるためには、新たなニーズを生み出し市場を作らなければなりません。積極的に古材をリフォームに使ったり、リメイクして家具をつくったり色々な用途が考えられます。以前実家に帰った時に、すりガラスをリメイクして作られたジュエリーボックスを購入したのを思い出しました。既成品にはない個性的なデザイン。

廃タイヤやビニールを利用したバッグがファッション分野で人気が出てきているように、こういったものが受け入れられる土壌は少しずつ出来ていると感じます。住宅や家具の分野でも革新的な取り組みをしている会社や個人がいないか調べて見たくなりました。自分でもアイデアを考えて見たいと思います。

単純に「新品か中古か」という新しさをに軸足を置いた価値感ではなく、「骨董品か工芸品か」というコレクター的な観点でもなく、長く使える普遍的な価値をもったものを良いものだとまずは自分が認められるよう、こういったものに触れて感性を育てて行かなくてはと感じました。

桜花園、車でないとなかなか行きづらいですが、建具が好きでもそうじゃなくても印象的な体験になることは間違いありません。少しでも気になる方は、ぜひ行ってみてください!